ビジネスマンのためのビジネスルール入門 #23

k.shirai

前回は、ローン審査業務をケースとして、OMG(オブジェクトマネジメントグループ)の新しいスタンダードであるDMN(意思決定モデルと表記法)の具体例を示しました。今回は、ボトムアップ型のビジネスルールアプローチとトップダウン型の意思決定アプローチの違いを整理してみます。

トップダウンアプローチ
(クリックして図を拡大)

従来型のビジネスルールアプローチ

BRMSによるプロジェクトの初期フェーズにおいて、多くの場合は対象領域における既存ルールの棚卸しとその整理から始めることでしょう。このアプローチは、いくつかの短所が最近指摘されるようになりました。第1に、ほとんど使われていないルールや陳腐化したルールをそのまま取り込んでしまう可能性があることです。第2に、ビジネス上の意思決定の改善という考慮をほとんど持ち合わせていないことです。第3に、ルールのかたまり(ルールセット)をシステム設計者からの視点からテクニカル的に決められてしまう可能性があることです。第4に、プロジェクトの先行きが不透明または不確実性を抱えたまま進んでいくことになります。結果として、BRMSの適用業務が拡大するにつれてルールリポジトリ(ルールの保管場所)の構造がカオス化してくるという米国からの調査レポートもあります。

 

意思決定主導によるトップダウンアプローチ

一方、これまでご紹介してきた意思決定主導によるトップダウンアプローチは、業務オペレーション上の意思決定の大きなスケルトンを定義していくことからスタートします。最上位の意思決定には、ビジネス目標のマイルストーンとなるKPI(重要業績指標)がアサインされます。たとえば、マーケティングオファーの推奨という意思決定に対しては、レスポンス率などは有力なKPIとなります。また、意思決定とそれに関連するビジネス知識(ルールセット)、知識ソース(ビジネス知識の拠り所)、インプット情報の関係がダイアグラムとして可視化されます。さらに、ビジネス知識としてのルールセットはシステム設計ではなく、ビジネス要件の結果として自然な形で定義されます。このような結果として、構築された意思決定管理システムはビジネス目標と密接に連携され、システマチックな意思決定の改善、再利用や共有化を促進します。前述の調査レポートでは、新しいアプローチは従来型のアプローチに比べて、同じビジネス目標を達成するために半分以下のビジネスルール(ルールエンジンに実装される)で済んだというケースがあることも指摘されています。

 

どちらのアプローチを採用すべきか?

とは言っても、全てのITプロジェクトが新しいアプローチに適しているわけではなさそうです。第1に、リバースエンジニアリング(レガシーシステムに埋め込まれているルールを切り出す)に近いプロジェクトには向いていません。第2に、データチェックや必要書類のような業務領域(本来的な意思決定とは言えない領域)だけをBRMSに実装する場合も向かないでしょう。もっとも、多くの業務オペレーションの中には、本来的な意思決定と決まりごととしてのルールが混在します。たとえば、適切な意思決定をするためには、その前にデータチェックが必要です。たとえ優れた意思決定ロジックを持っていたとしても、間違ったデータを使えば間違った結果しか生じません(いわゆるガーベージイン/ガーベージアウトと呼ばれるものです)。

 

意思決定の要件定義に続いて、次回からは意思決定の仕様について触れていきます。

 

(マーケティング担当:白井)

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